―― 「ねー、シロちゃん、起きてる?」 ―― 「……シロちゃんって言うな」 ―― 「起きてるのね。流星群、見に行こうよ!」 んー、とめんどくさそうな日番谷くんの声がする。そのまま寝入ってしまいそうで、あたしは布団の中で起き直り、日番谷くんのほうを伺った。 ―― 「ねぇ」 ―― 「うるせぇな……眠い」 ―― 「いいもん、あたし一人で行くもん」 潤林安は流魂街の中では治安がいいところだけど、それでも夜、子供ひとりで出歩くのは危険だった。 それでも、あたしは十年に一度だっていう流星群がその時、どうしても見たくて。 隣で寝てるおばあちゃんを起こさないようにこっそり起き上がると、溜め息をついた日番谷くんが同時に起き上がる音が聞こえた。 あの時交わした、十年後にまた流星群を見に行こうと言った約束。 あたし達の関係が十年前と同じなら、ためらいなく見に行こうと今、あたしは言っただろう。 でも…… あたしは、隣で寝息を立てている、日番谷くんの背中を見やった。 明かりを落としてるせいでぼんやりとしか見えないけど、盛り上がった肩のあたりが、規則正しく上下しているのが分かる。 どうしてもあの時みたいに、呼びかける気にはなれなかった。 もうあの時とは違っていて、そしてもう戻れないことを、自覚せざるを得なかったから。 やっぱりあの時、朝まででもいいからずっと、星を待てばよかったんだ。 あの時間が二度と来ないと知っていたら、きっとそうしてた。 願い事ができないじゃない。 厚く垂れ込めた雲を見上げて、そう文句を言った記憶がある。 でも当時、どんな願い事をしようと思ってたのか、もう覚えてない。 きっと、たわいもないことだったんだと思う。 今なら、きっと。 あたし達の関係が、これ以上離れませんようにと言いたい。 きっとそれが、お互いの成長の中で、どうしようもないことだったとしても。 あたしは、そっと布団から身を起こした。 そして、日番谷くんとおばあちゃんが眠ったままなのを確認して、そっと家から抜け出した。
TVさまよりお題をお借りしました。
「幼なじみに贈る5つのお題2」
知らない横顔⇒照れる夕陽にならぶ影⇒すこし前までできたこと⇒あの頃とはちがう⇒約束とひみつきち
と、連作になってます。
[2010年 1月 10日(2010年 4月 3日改]