こんなおまけページにお越しいただき、ありがとうございます。 別サイトでアップしていたものですが、こっそりこちらに引っ越します。 DAWN「覚醒」が日番谷と遊子の初対面だとすると、この話は二度目に会ったときの話です。そして3つも痛い点があります。 ・捏造です。 ・ギャグです。 ・オチがシモネタです。 どんとこいな方だけ、どうぞ。case.1 ジン太の受難
「てめー、好きな奴とかもういんのかよ! バッカじゃねえの?」 そうは言ってみたが、こいつはまだてんでガキだ。まさか、んなこたねーだろう。だが。俺が全然考えてなかった顔を、遊子はしやがった。頬をピンク色に染めやがった! こっそり読んだウルルの少女マンガに、そういうシーンがあったのを思い出した。 「どんな奴なんだよ」 モノのついでって風に、うまく声は出したはずだ。 「んー、そうだねえ……」 遊子は瞳を宙に向ける。 「身長はあたしよりも低いの。髪の毛は逆立ってて……声がすごく低くてかっこいいの!」 なに……! 俺は衝撃に身をのけぞらせた。それって、俺じゃねえか! まて、落ち着け。俺はこれからとんでもなくモテるはずの男だ。 こんなのは序曲にしか過ぎない。こんなとこで動揺してどうする! やつはそのまま続けた。 「髪はね、銀色に光ってるの。目は青緑みたいな、透き通ったスゴクきれいな色。 あたしを助けてくれたの……そのときに近くに顔があって。ホントかっこよかった……」 ちょっと待て。 「そ、そいつの、名前は……」 少なくとも俺は白髪じゃねえ! 俺はプルプルしながらやっとのことで言った。まったく、だれだか知らねえが、いらねえことしやがって!ぶっ殺してやる。 「お兄ちゃんの友達みたいなの。『日番谷冬獅郎』って。名前までかっこいいでしょ」 ふーん。俺の名前は花刈ジン太だ。日番谷冬獅郎か…… 花刈ジン太 < 日番谷冬獅郎 = 名前のかっこよさ。 って……んなわけあるかぁ!俺の名前のほうがよっぽどいけてんだよ!別に、遊子が誰をスキだろうと、知ったこっちゃねえ。ねえがむかつくんだよ! 「ここで会ったが百年目!」 俺はそいつの前で仁王立ちになり、そう言い放った。銀髪、青緑の目のガキ。間違いねえ。こういうときはそういうので正しいんだよな。あいては呆然としてやがる。そりゃ、俺が担いだ最強バットは只者じゃねえからな。こんなのを軽々と担ぐ俺は、もっと只者じゃねえ。 「……何か用か」 それに対するそいつの返事は、それだけだった。なんてつまらねえ返事だ。こいつはきっと頭が悪い。 「おい、何やってんだ!」 「やめたほうがいいっスよ〜」 外野がいろいろ言ってるが、この最強バットを担いだオレサマの半径3メートル以内は、いくら店長や黒崎だろうが入ってこれねえはずだ。 「がんばれ隊長!」 ん?聞きなれねえ声はギャルみてえな派手な女だ。 ……隊長? あだ名か。 「うるせえんだよ……」 茶化された日番谷はため息まじりに言った。 「かかってきやがれ、日番谷!何なら俺が先に!」 あ。言い終わるまでに殴りかかっちまった。 こういうのは初めっから自分が先に攻撃するつもりでも、一応最後まで言わなきゃいけねえんだよな。 失敗した。 そう考えながら1メートルは俺は跳んだ。そして最強バッドを大きく振りかぶる。並みの死神じゃイチコロの、俺だけが扱える特製バッドだ。それに対するあいつの反応は……当たったか、と思った直前に、ふっと避けやがった。バッドが空を切る。肩に刀を担いでるくせに、刀を抜く暇もなかったか。 矢継ぎ早に次々とバッドで殴りかかるが、当たりそうであたらねえ。 「……っくそ!」 当たりそうってのが余計ハラが立つ。 「いい加減に……」 渾身の力を込めて振りかぶった時だった。角をまがって現れた女の顔に、俺は上空で凍りつく。 遊子! 「……えっ……」 上空でバッドを思いっきり振りかざした俺に、その場で立ち止まる。 「ばっ、ばか、よけろ!」 叫んだが、ムダだと分かってた。俺の神速バットを避けられるはずねえ。 そのとき。俺は目をつぶった。が。バッドは振り下ろされなかった。途中で何かで止まったんだ。 「な……」 目を開けた俺の目に、遊子の姿は見えなかった。しゃがみこんだ遊子の前に、日番谷が立ちはだかり、右手の甲で俺のバットを受け止めていた。 ――ピクリともしねえ……。 そう思った瞬間。俺の体がくるりと宙を一回転した。 「うぇっ!」 そのまま地面に頭から落ちる。 「ひ、日番谷くん……」 「また会ったな。なんで俺の名前知ってんだ」 「お兄ちゃんに聞いたの。あたしはユズ」 ちょっと待て、この会話。なんだ遊子のこのキラキラした顔。あいつ、地面に転がった俺に見向きもしねえ。いきなり殴りかかったってのに傷つきもしてねえし、心配もしてねえ。 なんなんだよ。 俺は立ち上がり、 「あ……ジン太くん!」 慌てて袖を掴もうとした遊子の手を振り払ってダッシュした。日番谷冬獅郎。俺に屈辱を与えた男。絶対にゆるさねえ、って思いながら。case2 日番谷の受難
やたら断固とした声で松本が言った。 「隊長、そこに直ってください」 「俺が何したってんだ?」 「居直ってくださいとは言ってません」 俺は不承不承松本の前に胡坐をかいた。俺の人生の中で、コイツに説教食らう場面だけはありえねえと思ってた。 「さて、問題です。隊長は何をしたでしょう」 「ガキのバットをかわして、最後に受け止めただけだろ。他に何かしたか?」 本気で思いつかねえ。松本はハラが立つほど長々とため息をついた。 「ユズっていう一護の妹を助けたでしょ」 「結果的にそうなっただけだろ。大体それのどこが悪いんだよ」 「ここがポイントなんでしょ!妹が助けられてたとき、ジン太は地面に伸びてた。どれほどジン太のプライドが傷ついたか分かります?この状況」 「大げさだな。何が……」 はあっ! 松本がため息を通り越して声を出した。そして肩越しに黒崎を振り返る。 「ダメだわ、この隊長、このテのことにはまるでボンクラ」 「誰がボンクラだ……」 「だから!ジン太はユズちゃんのことが好きなんです! でもユズちゃんは隊長のことが好き……魔のトライアングルが形成を」 「……乱菊さん。やめてくれよ」 黒崎が頭を抱えるのが見えた。 「……」 「ほら、ボンクラじゃないですか」 ……を並べている俺にむかって、松本はダメ押しのようにボンクラボンクラ、はぁぁ〜ため息でちゃう、とやりやがった。 この女……一回くらい畳んどくか。 「で。仮にそうだとして、なんでジン太ってガキが切れてるんだ?さっぱりわかんねえ」 俺の言葉に、今度は松本が頭を抱えた。 「何でわかんないかな……ジン太は、ユズちゃんの前でかっこいいとこ見せたかったのに、ライバル視してる隊長にあんなにかっこ悪い形で負けたんですよ? 傷つかないわけ」 「ちょっと待て」 俺は松本の嘆きを途中で切った。 「俺は護廷十三隊の隊長だ」 「……はあ」 「百歩譲ってそんなのはどうでもいいとしても、俺は死神なわけだ。なんでこんな人間のガキと、関わらなきゃならねえんだ」 「いや、それは」 「寝る!」 俺は宣言して胡坐を崩した。 バカバカしい。 ごろりと畳に転がって、もう一度そう思った。 「いいッスよ、乱菊さん。まだ遊子にはそんなのはええよ」 黒崎がいいオニイチャンな顔して言ってる。しかし、妹の年は気にしても、相手が死神だって言うのはスルーか。 「ダメよ!」 それに対して、松本はやたら力をこめて言った。 「あたし……あたし、初恋、かなわなかったの。だから、やっぱりね……昔のあたしと同じくらいの年の子、見てたらほっとけなくて」 「……乱菊さん……」 黒崎、そんな唐突かつベタな嘘泣きにひっかかるんじゃねえ。流れ的にオカシーだろ。俺はそっぽを向いたまま言った。 「松本、懐からレンズでてんぞ」 はっ! 松本が懐に手をやって、 「なーんだ隊長、レンズなんて……」 言いかけて黙った。俺と松本の目が合う。 「……松本」 「はい」 「こないだ出たボーナスで、お前でぢたるかめら、とか買っただろ」 「発音が変です、隊長」 「黙れ。そしてお前は、それで俺の写真集を、懲りずにまた作って売ろうとしてるだろう」 「すごーい隊長、なんで分かるんですか?」 「やっぱりそうか!!!」 俺は立ち上がり、ずかずかと松本の前まで歩み寄ると、松本の胸元に手をつっこんだ。 おぉ…… 黒崎が声をもらす。 こいつの胸元はドラ○もんのポケット並みに、いろんなものが突っ込めるらしいからな。 ずい、と俺はでぢたるかめらを引きずり出して、一瞬で氷漬けにする。 おぉ…… 黒崎がもう一度声をもらす。器の小っさい男だな。 「あ……あたしの……」 松本は身を震わせている。 「あたしのデヂタルカメラ!よくも。よくも……」 無駄に霊圧があがる。こいつ、まさかとは思うが、まさか…… 「唸れ、灰猫!」 やりやがった! 俺はすかさず腕を一振りした。その動作で水を呼び出す。 「あぁっ!灰が水浸しに……」 「無駄に始解するんじゃねえ!」 「もう隊長と一緒に戦えない!水浸しなんて……」 「相性わりい技だよな、お互い」 なんの悪意もあるのかねえのか、黒崎の一言が俺達のやり取りにトドメを差した。 そのとき、バタバタ……とすげえ音で廊下を走ってくる音がした。 バッシーン!! 障子が押し開けられたそこには、あのジン太とかいうガキが立っていた。 目を血走らせ、額には青筋立ってるが泣いてるようにも見える。 怒るか泣くかどっちかにしろ。 そいつは、俺のところにズカズカとやってきた。 そして、俺をビシ!と指差した。 「一億歩譲って!お前を俺のライバルと認めてやる!」 へっ? イラネーとか。何がどうなってそうなるんだとか。俺が適当な言葉をひねり出す前に、そいつは続けた。 「確かにお前は俺よりちょっとばかし強いかもしれねえ。身長もたけえしな。でも……ぜったい、俺のほうが……キン○マはでけえ!!」 「……は」 「キン○マのでかさが男としてのでっかさだって、店長が……うぉぉっ?」 「た、隊長!卍解はダメです!一護とめてー!」 「ご乱心!ご乱心!」 ***************** 一日後。 「……日番谷隊長。そこに直りなさい」 「……はい」 俺は、現世の浦原商店を全壊した上、氷漬けにした罪状で、総隊長に呼び出されていた。 「で、一体なぜじゃの」 俺は石のように沈黙を守った。それ以外の何ができるってんだ。 「どんな理由があろうが、感情のままの暴挙など、小物のようなことをするでない」 小物。 それはどんな言葉より、俺を脱力させた。 「……申し訳ありません」 「うむ。罰として」 そらきた。虚の群れに放り込まれようが、流魂街の荒地に派遣されようがまぁ平気だ。 俺がこの件を頭から消し去ろうとした時。 「浦原商店を修理してきなさい」 「そ……」 それだけは勘弁してください、とか、そんなアホな、とか。 およそ死神らしくねえ言葉を、俺は喉の奥で飲み込んだ。 俺の受難は、まだまだ終わりそうにない。というか、始まりだった。
お粗末さまでした。ホンマに。
[2008年 12月 11日]