祖母が死んだ。
心臓発作による、あっけない死だった。
一昨日の朝、いつものように母が起こしに行ったら、もう冷たくなっていたらしい。
「86歳まで生きられたんだから大往生だ」とお医者様に言われたと、電話の向こうの母は疲れた声で少し笑った。

久しぶりの実家に入る前、玄関の上に架けられた表札を見上げた。
村上卓也。早苗。志可。悠也。棗。
志可が祖母の名前で、棗が私。
東京の下町で始めたアンティークきもの屋の運営が軌道に乗るまでここには帰らないつもりだったのに、
こんな理由で玄関をくぐることになるとは、思わなかった。

背を向けている庭から、秋の虫たちの音色が聞こえてくる。
蟋蟀(コオロギ)、鈴虫、邯鄲(カンタン)。
どの音色がどの虫なのか、教えてくれたのは祖母だった。
玄関から客間に入ると、すでにお葬式の準備は整っていた。


私のふるさとは田舎なので、お葬式は家で行うのが常だ。村上家も例外ではなかった。
家で葬式をする時は、準備はすべて、近所のかたが担ってくれることになっている。
気が動転している遺族たちを、これ以上疲れさせまい、亡くなった人との最期の別れが十分にできるようにとの心遣い。
そうは言っても、何十人もお客さまがあるお葬式はやはり慌しく、気づけばもう、火葬場へ向かうバスに揺られていた。

火葬場は、どうしてあんなに冷たいんだろう。巨大な冷蔵庫の中にいるみたいだ。
焼かれて出てきた、骨だけになった祖母の体を見下ろす。周りからすすり泣きが漏れる。
こんな時なのにどうしても、私は涙がでなかった。十八年間同じ家で暮らした、なじみぶかい人なのに。
どうしても、ここにある骨のかけら達が、私の知っている祖母と重ならないのだ。
「そこは掌の骨ですね」
私が長い箸で骨を挟んだ時、式場のかたがそう言った。
「よく残っています。丈夫なおばあさんだったんですね」
農業をずっとしていたので、と母が返すのを、私はどこか遠く聞いていた。
視線は、箸先のちいさな骨に向けられている。

ーー「棗」
私を撫でてくれた掌が、頭をよぎる。
日焼けして皺だらけで、一本一本の指はがっしりと太かった。
その向こうにある、祖母の顔を思い出そうとする。祖母の懐かしい声が、言葉が、次々と甦る。
ーー「おばあちゃんが死ぬ時には、そばにいてくれるか?」

「あ」
箸から、骨が滑り落ちる。それは骨が並べられている台の上に再び落ちる。
カラン、と乾いた音がした。


***


カラン、カラカラ。
小さな台所に響き渡った乾いた音に、私は我に返った。
冷凍庫の中で使わないままに小さくなっていた氷を、シンクに開けた音だった。
水を流し、氷の塊を一箇所にまとめる。
蝉時雨、たたきつける豪雨、花火の音。
賑やかな夏が通り過ぎた瞬間、静寂が訪れる。
ああ、もう秋が来る。慣れないその沈黙に耳が驚く時、季節の変化を知るのだ。
祖母の葬式の翌日のことだった。まだまだ体に、線香のにおいが残っている気がする。

お店の中の私の定位置、一番奥まった座敷に座る。
お客さんはなく、私は心おきなく小さな仏壇に向かい合う。
位牌はひとつもなく、近所の仏像屋さんで修行中のかたが、戯れに彫ってくれた木彫りの仏像が納められている。
そこに、祖母と私が並んで笑っている写真を飾った。実家のアルバムから、一枚引き抜いてきたものだ。
写真の中にいる高校生の私は、朗らかに笑っていた。祖母が死ぬなんて夢にも思っていなかったころの私だ。
確かに、この写真にいる「私」は、祖母と一緒に死んだのだろう。

ため息をついた時、ガラガラと音を立てて店の引き戸が開いた。
「いらっしゃいませ」
とっさに声をかけたけれど、その声は妙に掠れていた。
「取り込み中か?」
銀色の髪をそよがせた冬獅郎君が、通りに立ったまま店の中を覗きこんでいる。
「こんにちは、冬獅郎君。大丈夫よ、どうぞ」
初めて会ってから一年と経っていないが、少し背が伸びたかもしれない。
一瞬で、店の中の空気を読み取る大人びたところは、かなわないなと思う。
仕事中、放心してしまっていた。働き者だった祖母が見たら、「しっかり働きなさい」とびしっと怒るだろう。

「適当に見てる。気に入ったのがあったら声かける」
そう言って入ってきた冬獅郎君は、涼しそうな薄鼠色の着流しに身を包んでいた。
1ヶ月前、この店から買っていってくれたものだ。
普段着のきものを買っていくのに、それを身に着けているのを見るのは珍しかった。
「今日は洋服じゃないのね?」
「体にまとわりついて暑いんだよ」
大人のように懐に右手を突っ込んでいるけれど、だらしない着方ではなくてびしっとしている。
洋服を着ているときも思うけれど、身のこなしがいつも凛としていて、彼が店にいると空気が引き締まる気がするくらいだ。
その歩き方。裾をさっと払ってしゃがみこむ仕種。商品のきものを引き出すとき、袖を脇に避ける手つき。
やっぱり、和服を着慣れたひとの動きだと思う。流れるようで、無駄がない。

店内の中でも奥まった場所にあり、いつも日陰だけど風通しはいい。
私はその場所に、男の子用のきものを置くと決めていた。
初めは、晴れ着でない男の子用のアンティークきものを手に入れるのに苦労していたけれど、
私が好んで買うことはじわじわと同業者の間に知れ渡り、わざわざいいものがあると教えてくれるようになっていた。

子供子供した柄物や、明るい色のものは買わない。
大人のようなしっかりとしたつくりで、古くとも上質なものを選ぶ。
「まるで、着る相手が決まってるみたいな買いかただ」
と笑われたけれど、そのとおりだ。私は真剣な顔で、きものに見入っている横顔を見やる。
私は何も言わないけれど、彼はそこに自分用のきものがあるとわかっているから、迷わずそこに来る。

……そろそろ、彼用に服を仕立て直して店に置いた方がいいかな。やっぱり背が伸びた後姿を見て、思う。
身の丈は130センチ台なのに、冬獅郎君の体格は意外なくらいがっしりしている。
肩幅が平均よりも広いし、腕だって太いのを、過去何度かきもの合わせをした時に気づいていた。


「……松本さんは今日は来ないの?」
先日いっしょに来ていた女の人をふと思い出す。
波打つ金髪で、綺麗な顔立ちでスタイルも抜群の、極上の振袖みたいなひと。
「あいつは今、それどこじゃねぇ」
冬獅郎君は、苦々しい口調で返してきた。
「大量に書類を溜めてやがった。あいつが処理を終えねぇと俺も承認できねぇし、まだまだ処理は終わらねぇしで時間が空いたんだ」
「忙しいのね?」
「さぼってるだけだ、あいつは」
ふっ、と私が微笑むと、話しすぎたと思ったんだろうか、冬獅郎君はまだ黙ってきものに視線を戻した。

冬獅郎君は、なにかの事情で体が成長しなくなっただけで、本当は大人なのかな? と思うことがある。
彼は、見た目以外は大人よりも大人に見えるから。
日番谷冬獅郎君は一体なにもので、どこから来てどこへ行くのか。詮索は、初めからしないと決めている。


冬獅郎君は、着物を選ぶのにあまり、周りの意見を必要としないタイプだ。
それを知っている私は、彼から視線をそらし、自分の作業へと戻った。
仏壇の下にある小さな引き出しを開けて、蝋燭(ロウソク)の小箱を取り出す。
掌に収まるくらいの大きさの表面には、金色の字で名前が書いてある。
箱を開けると、和紙の向こうに六本の和蝋燭が行儀よく並んでいる。

さくら、うめ。ききょう、ふじ。
季節の花が、黄色がかった蝋燭の表面に描かれている。
その中から一本取り出して、蝋燭台に据えつけた。

「綺麗な炎だな」
火をつけたとき、後ろからやってきた冬獅郎君に声をかけられた。
「蜜蝋でできた蝋燭だから。炎の色がまろやかになるのよ」
「へえ」
蝋燭にもいろいろあるんだな。そう呟いた冬獅郎君の大きな目に、炎の茜色が映っている。
きれいだ、ともう一度思った。

冬獅郎君の目は、自然と仏壇の奥の写真に吸い寄せられた。
「誰か、亡くなったのか」
「……ええ。祖母が」
「そうか」
まるで、咲いていた花が萎れた、と聞いたような、自然な声音だった。
落ちた沈黙を埋めるように、私は饒舌になる。
「祖母がね。この蝋燭を気に入っていたの。お盆には毎年供えてって言ってた」
三年ほど前に北鎌倉でお寺めぐりをした時、お土産に買ってきたのが同じ蝋燭だった。
普段、女らしい可愛らしいものには興味がない祖母が、意外なくらい喜んだからよく覚えている。
「お盆には毎年供えて」。今になってその言葉が、自分の死んだ後のことも思っての言葉だったとよくわかる。

軽い言葉のはずが、遺言になってしまったな。
またあの蝋燭を、鎌倉まで買いに行かないと。炎を見ながら、そんなことを思った。

「……実感が沸かないの。あまりに、突然で。まさか、死んじゃうなんて思わなかった」
「まるで死なない生き物がいるみたいな言い方だな」
思わず、後ろに立っていた冬獅郎君を振り返った。なぜだか、見られている肩の辺りが寒くなったような気がして。
「全ての者が死ぬ。人間なら百年弱だな。お前の祖母も、お前だって死ぬ。自然なことなんだ」
「……あなたも?」
途端。冬獅郎君の顔から、表情がスッと抜け落ちた。

「なんでもない」
沈黙を刈り取るように、私は話題を終わらせた。
彼の素性を、聞いてはいけない。そのタブーをあっさりと侵そうとしていたことに気づいたからだ。
なんとなく……感じていた予感が、嘘ではないことを悟る。
「彼が何者なのか」それを私が知ってしまったとき、きっと私たちはもう二度と会えなくなる。
「お会計ね。きもの、畳みなおすね」
冬獅郎君が抱えていたきものを受け取ると、畳の上に広げた。


……畳、に。
うつぶせて呻いていた祖母を見つけたのは、私がまだ高校一年生のときだった。
「大丈夫?」
高校の鞄を投げ出して駆け寄った。季節は秋なのに、祖母の額には玉のような汗が浮かんでいた。
「救急車、呼ぼうか?」
「近所の人が、なにごとかと思うから……」
身を起こすこともできないのに、そんなことを言って首を振る祖母を、もどかしく思う。
母は、父は、仕事中で不在だ。自分が車を運転できないことを歯がゆく思う。
どうすればいい、タクシーを呼べばいいのか? 電話番号は。
「大丈夫。ベッドに行くの、手伝ってくれるか……?」
身を何とか起こした祖母を、手を差し伸べて支える。預けられた体重は、どっしりと重かった。

30分くらい経って、体温計を持っていったりタクシー会社を調べたりしているうちに、祖母の寝息が聞こえてきた。
「……寝た、の?」
額に浮かんでいた汗は引いている。青白かった顔にも、血の気が差してきている。
どうやら、病院に駆けつける必要はなさそうだ、と胸をなでおろした。
母に電話を入れておこう、と立ち上がった時だった。
「そこにいて」
少女のような、怯えきった声だった。見上げてきたその目が、しっかりものの祖母とは信じられないくらいに弱っている。
「あたし、ここにいるよ」
私は布団に手をつき、祖母を見下ろす。
そして電話をかけるのを諦め、ベッドを背に、もたれかかった。

母が仕事を終えて帰ってくるまで、きっと2時間くらいそうしていたと思う。
当時の会話以外の「音」の記憶は、まるでない。今と同じように、やっぱり何の音もしなかったんじゃないだろうか。
その分、言葉の一言一言が、鮮やかに胸に残っている。
「おばあちゃんが死ぬ時には、そばにいてくれるか?」
ああ、その時に、そう言われたのだった。
縁起でもない。すぐにそう笑おうとしたけれど、祖母の目が私を捕まえて離してくれなかったから。
うん、と私は小さく頷いた。


「……棗? どうしたんだ」
聞こえてくる冬獅郎君の声が、別の世界のように遠い。


高校生だった私は、例えればまだ人生の春を迎えたところ。
晩冬を迎えようとしていた祖母が、何にそれほど怯えていたのか、思いやることができなかった。
今もまだ理解には遠い年だけど、祖母が恐れていたものの正体を想像することはできる。

着々と迫り来て、全てを奪ってゆく「死」というもの。
体調を崩すたびに、ついにそのときが来たのかと、怯えていたに違いないのだ。
そしてその時に、ひとりでいることが何よりも辛かったのだろう。
それなのに、誰にも見取られることなく、独りで逝ってしまった。
その瞬間、どれほど悲しくて、怖かったかと思う。

ーー「おばあちゃんが死ぬ時には、そばにいてくれるか?」
最期の約束を、守れなかった。
仕事が軌道に乗るまでと意地を張って、帰ることもしなかった。
……あたしは、馬鹿だ。
気づけば、涙で目の前が、何も見えなくなっていた。


***


……どれくらいの時が経っただろう。私は顔を上げた。
燈を入れていない店の中は薄暗く、大きく開け放たれた引き戸の向こうでは、斜めに夕焼けの光が差し込んでいた。
「冬獅郎……君? いない……」
冬獅郎君から受け取った着物が、畳み掛けたまま私の隣に広げてある。
時計を見て、驚いた。あれから、すでに三時間あまり放心していたことになる。
お客さんが来ているのに、なんてこと。冬獅郎君が帰ってしまって当然だった。
無理やり我に返らせることなくその場を去ったのは、むしろ彼らしい行動に思えた。

店はもう閉店の時間だ。とりあえず開きっぱなしになっている引き戸を閉めようと、立ち上がる。
途端、長い間固まっていたために、強張った体のあちこちが痛んだ。
「いた……」
顔をしかめて身を起こし、下駄に足を通す。背筋をぐんと伸ばして、外の景色を見やった時。
いつからだろう、そこに佇んでいた人物に、私は息を飲んだ。

浅黒く日焼けし、皺の入った小さな手を、やわらかくお腹の前で重ねて。
藍色のふんわりしたもんぺを穿いて、ちょっとくたびれた青系のシャツを着て、頭に手ぬぐいをふわりと被せて。
夕陽に照らされたその女性は、しゃんと背筋を伸ばして立っていた。
「お、」
私は足をもつらせて、二、三歩前へ出た。口が、足が、糸で絡め取られたようにうまく動いてくれない。
「おばあちゃん!」
私のよびかけに、おばあちゃんはちょっと首をかしげた。いつもの仕種だった。
手ぬぐいから覗いたその顔は、最期に私が会った二年前のままだった。
健康的に日に焼けた、皺が刻まれた顔。その目が、私の前で止まった。
目じりが下がり、にっこりと微笑むのを、私は確かに見た。

刹那。
秋の風が吹き抜ける。
瞬きをした一瞬に、祖母の姿はさっと掻き消えた。
「……」
思わず、その場に座り込んでしまった。両耳に栓をしたように、自分の動悸が大きく聞こえる。
あれは間違いなく、祖母だった。そして、祖母はもう、骨になってしまっている。
自分の願望が見せた幻だというにはあまりにも、はっきりと見えた。

もう一度、祖母がいた外に視線を向ける。そこには、さっきまではいなかった人物が立っていた。
「冬獅郎く……」
見慣れた輪郭に、呼びかけようとした言葉が止まる。
外は明るいのに、その姿は漆黒に見えた。光の中に、闇が生まれるはずはないのに。
冬獅郎君は、私を見ているらしい。気づけば、肩が勝手に震えだしていた。足にも力が入らない。

あの人は……誰なの?
聞いてはいけない言葉が、喉元までこみ上げてくる。
「……気づいてるんだろ? なんとなく」
まるで私の心の中の問いが分かったかのように、冬獅郎君が口を開いた。
「俺は、死神なんだ」
「しにが……み」
言い慣れないその言葉を、反芻する。彼を「異質」だと思った全てのことが、そこでしっくりと収まる。
ああ、確かに、と思う。確かに、私はずっと昔からそのことを、気づいていたのかもしれない。

ざっ、ざっ、と足音が聞こえる。
終わりになるのだな、と何となく悟った。
何か言いたいのに、私は気づけば地面に視線を落としていた。
彼を、見てはいけない。私の本能が警鐘を鳴らしている。「あれ」は、全ての生ある者にとっては、禁忌だと。
「……待って」
足音が、止まった。
「待って」
繰り返すことしか、できない。
本能とは別のところで、行かないで欲しい、と願っている。

わずか、ため息が聞こえた気がした。
そして数秒の間を空けて、ガラガラ、と引き戸が閉まる音が聞こえた。
完全に引き戸が閉まってから、ふぅぅ、と息を吐き出した。まだまだ、立ち上がれる気がしなかった。

「……お前の、祖母のことだがな」
びくん、と肩が震え、私はとっさに顔を上げていた。
「冬獅郎君……」
帰ったのだと思っていた彼は、店の中に入ってきていた。後ろ手で、引き戸を閉めたのだ、と分かった。
彼の姿が黒く見えた理由がはっきりする。来ている単も、袴も、闇を染め抜いたような黒だった。
でも銀色の髪と翡翠色の瞳はそのままで、明るい光を宿している。
その無表情から、感情は窺えない。

「もう、何も苦しくない。怖くないと言っていた。お前に心配をかけて、悪かったと」
そんなとこで座り込んでるんじゃねぇと、ちょっと軽い口調に戻って、冬獅郎君は私に手を差し出した。
初めて取ったその手は、温かくて。
私はようやく、涙を流すことができた。


***


十月。どうやらすぐに店を畳まなくてもいいくらい、運営できるようになった「なつめ堂」は、会員カードを作ることにした。
記入シートの「DMを受け取りますか」という項目を見下ろし、ふと考える。
……冬獅郎君は、DMは受け取れないよね。

ひと仕事終えて肩をまわしていると、ふわり、と頭上を蝶が舞った。
「どっから入ってきたのかな……揚羽蝶?」
虫には詳しくないけれど、何だか普通の揚羽蝶と比べると体が大きく、羽の模様も違う気がする。
東京にもこんな蝶がいるのか、と思った時だった。不意に、蝶がしゃべった。
「明日の夕方、行く。何か見繕っておいてくれ」
「へっ?」
蝶が、冬獅郎君の声でしゃべった! 私が唖然としているうちに、蝶はふわりと舞い上がり、天井の辺りでふ……と消えた。

「も……もう」
胸の動悸を押さえつける。
あれから冬獅郎君は、自分のことを何も隠さなくなった。
それは嬉しい、嬉しいのだ……が。
もう少しゆっくり、やってくれないだろうかと思う。いきなり全てを見せられたら、心臓に悪すぎる。

十月になり、秋が深まる。季節がまたひとつ、変わる。
変わり目の楽しみがひとつ加わっている。季節が変われば、冬獅郎君に会える。
冬獅郎君の定位置に向かう自分の足音が喜んでいるのに気づいて、私はひとり微笑んだ。




夕映  完




北鎌倉にある大覚寺で、土日に出ている屋台では、「夕映」という和蝋燭が買えます。
まだ売ってるといいのですが……
「なつめ堂シリーズ」(と名づけることにした)第三弾です。
残暑企画「ホネのような話」第一弾でもあります。
あまり怖くないですね^^; 次はがんばります!

[2010年 8月 23日]