もくじ。
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時刻はちょうど、午後6時。
懐中時計を横目に、すっかり夜の帳を下ろした窓の外を見ていた日番谷は、カチッと時計の蓋を閉めた。
「今年の業務時間は終了だ。全ての扉の錠を下ろせ」
「了解しました!」
隊首席に背筋を伸ばして整列した三〜十席が、勇ましく返事を返すと同時に、建物中に散った。
十分後、十番隊士達によって全ての錠前が下ろされた。毎年の十番隊の恒例行事である。
そして、哀れな男女が、きっちりと閉まった門の前に、今年もやってきた。
『日番谷隊長! 扉を開けてください! 残務処理しねぇと十一番隊は年初に解散とか言われてんです! 一緒に現世で共に戦った仲じゃないですか!』
『日番谷くぅーん、頼みがあるんだけど。この書類に署名したいんだけど、おじさんアル中だから手が震えちゃって、手伝ってくれないかなあ。何、たった千枚ぽっちだよ』
『日番谷隊長! う、う浮竹隊長が倒れちゃって……承認ができないんです。お願いします、ちょっと手伝ってくださいぅぅわわわぁん!』
「……と、言った声が門前から届いておりますが、いかがしましょう日番谷隊長」
遊里道(ゆりみち)七席に律儀に報告された日番谷は、うぅん、と顔を引きつらせながら頷いた。
斑目、京楽、虎徹清音。定時すぎて即これだから、年越し前は門前市をなすかもしれない。
なんで、毎年毎年大晦日の夜まで仕事を持ち越すんだ。学習能力ないのかこいつらは?
「却下!」
恨み節を垂れる門の向こうに、日番谷は腕組みしたまま一喝する。
ええ〜そんなぁ、オニ! アクマ! と声を上げる同僚達に、声を荒げて言い返す。
「うるさい! いいか、俺は訴え仏じゃねぇし、ボランティアでもねぇ。総隊長に報告して指示を仰げよ!」
「十一番隊解散だって言われたんスよ!」
「そいつは結構だ、皆すがすがしく新年が迎えられる」
「日番谷隊長ォ!」
「これから十番隊は、毎年恒例の宴会だ。邪魔すんなよ」
にべもない言葉と共に、日番谷は背中を返した。