もくじ。 1 /2 /3 /4 /5 /6 「男でも、女でもなかったなんてなぁ」 1月1日、昼間。 十番隊のソファーに背中をもたせかけた一護が、感心したような呆れたような声で言った。 何だかんだで朝方まで飲まされた割に、さっぱりした顔をしているから酒には強いのかもしれない。 「いーちごー、大きな声出さないでよ、頭に響く……」 対照的に、向かいのソファーに体を投げ出していた乱菊がうめき声をあげた。 「お前な。二日酔いならなんでここにいるんだよ。自室で寝てろ」 いつもの癖なのか、隊首席に座っていた日番谷が、ため息まじりに副官をみやる。 だぁってぇ、と乱菊はだらしない声をあげた。 「一人で二日酔いで寝てるって惨めじゃないですかぁ」 「ここにいても十分惨めだ」 そう憎まれ口を叩きながらも、日番谷は給湯室へと立った。 しばらくして、急須と湯呑みを三つ、盆に載せて戻ってきた。 「ホラ、茶でも飲め」 「隊長、やさしい♪」 「とっとと治って働け」 二人の会話に苦笑しつつ、日番谷が手ずから淹れてくれた茶を一護は口に運ぶ。 それは、香り高い玉露だった。 「男でも女でもないっていうか、どちらでもあるんだ。両性具有って言うくらいだしな」 もう一度隊首席に座りなおして、日番谷が話を戻した。 「どーすんだ? どちらかに決めなくていいのか?」 「まあ、急がなくてもいいさ」 日番谷の口調は、いつになくのんびりしている。 やはり正月一日目、ということが大きいのかもしれない。 「ていうか、名前は結局、どうなったんだよ? 俺、途中からあんまり覚えてねぇんだけど……」 だらしねぇな、と日番谷は一護をにらみつけたが、どこか楽しげに続けた。 「縁(エン)にしといた。ある程度大人になって、自分でどちらの性別がいいか選択する時が来たら、読みも決まる」 「それまで、名付け親としての隊長の仕事は終わらないわけですね」 ちょっと持ち直したらしい乱菊が、そう言った。日番谷は眉をしかめる。 本当だ、しまったな……そうひとりごちる彼は、やはりいつになく平和な顔をしていた。 日番谷につられて、一護は空を見上げる。窓に切り取られて四角形の空は、見事に真っ青だった。 A SPECIAL WORD FIN.
2010年年賀メール企画に使った小話です。
おぉ久しぶりに読んだ!という方、初めてって方も色々だと思いますが、
そろそろ時効かなと思って出して見ました(笑
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あけましておめでとうございます!
ほんの一瞬、今更新中の「名探偵の采配」とも内容がつながってたりします。
両性具有っていうのは、男と女の身体的特徴をどっちも持ってる人のことですね。
知り合いにはきっといないですが、案外多いらしいです。
それはそれとして・・・
去年の、みなさまとのご縁を感謝しつつ、今年も「妄筆」をよろしくお願いします^^
[2010年 1月 1日]