もくじ。



「男でも、女でもなかったなんてなぁ」
1月1日、昼間。
十番隊のソファーに背中をもたせかけた一護が、感心したような呆れたような声で言った。
何だかんだで朝方まで飲まされた割に、さっぱりした顔をしているから酒には強いのかもしれない。

「いーちごー、大きな声出さないでよ、頭に響く……」
対照的に、向かいのソファーに体を投げ出していた乱菊がうめき声をあげた。
「お前な。二日酔いならなんでここにいるんだよ。自室で寝てろ」
いつもの癖なのか、隊首席に座っていた日番谷が、ため息まじりに副官をみやる。
だぁってぇ、と乱菊はだらしない声をあげた。
「一人で二日酔いで寝てるって惨めじゃないですかぁ」
「ここにいても十分惨めだ」
そう憎まれ口を叩きながらも、日番谷は給湯室へと立った。
しばらくして、急須と湯呑みを三つ、盆に載せて戻ってきた。
「ホラ、茶でも飲め」
「隊長、やさしい♪」
「とっとと治って働け」

二人の会話に苦笑しつつ、日番谷が手ずから淹れてくれた茶を一護は口に運ぶ。
それは、香り高い玉露だった。
「男でも女でもないっていうか、どちらでもあるんだ。両性具有って言うくらいだしな」
もう一度隊首席に座りなおして、日番谷が話を戻した。
「どーすんだ? どちらかに決めなくていいのか?」
「まあ、急がなくてもいいさ」
日番谷の口調は、いつになくのんびりしている。
やはり正月一日目、ということが大きいのかもしれない。

「ていうか、名前は結局、どうなったんだよ? 俺、途中からあんまり覚えてねぇんだけど……」
だらしねぇな、と日番谷は一護をにらみつけたが、どこか楽しげに続けた。
「縁(エン)にしといた。ある程度大人になって、自分でどちらの性別がいいか選択する時が来たら、読みも決まる」
「それまで、名付け親としての隊長の仕事は終わらないわけですね」
ちょっと持ち直したらしい乱菊が、そう言った。日番谷は眉をしかめる。
本当だ、しまったな……そうひとりごちる彼は、やはりいつになく平和な顔をしていた。

日番谷につられて、一護は空を見上げる。窓に切り取られて四角形の空は、見事に真っ青だった。




A SPECIAL WORD   FIN.




2010年年賀メール企画に使った小話です。
おぉ久しぶりに読んだ!という方、初めてって方も色々だと思いますが、
そろそろ時効かなと思って出して見ました(笑

***
あけましておめでとうございます!
ほんの一瞬、今更新中の「名探偵の采配」とも内容がつながってたりします。
両性具有っていうのは、男と女の身体的特徴をどっちも持ってる人のことですね。
知り合いにはきっといないですが、案外多いらしいです。
それはそれとして・・・
去年の、みなさまとのご縁を感謝しつつ、今年も「妄筆」をよろしくお願いします^^

[2010年 1月 1日]